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署名も認めるように改正された。
ドイツの法律では、法律によって書面形式を要求される書類は、発行者自身が手書きによるか、または、公証人によって認証された印(Sign)によって署名されなければならない。ファクシミル署名は、例えば、記名株券(share certificates)では容認されるが、債券(bond and debenture)については、「機械的複写」(mechanical reproduction)による署名は認められるが、「通常の印刷によって作成された」署名は容認されないであろうと、文献に述べられている。
スウェーデンの法律では、慣習によって署名が要求されているが、法律では要求されていない。署名は、どのような方法で作成されても差し支えない。英国では、流通性書類に対する場合を除いて、署名が法律によって要求されることはほとんどない。しかし、署名の定義はないので、ファクシミル署名も容認される。
?権利の化体および原因契約からの分離
流通性書類の欠くことのできない特質として、1つあるいは複数の権利を化体しているということが挙げられる。流通性書類は複数の権利の象徴であると同時に、権利を取引する手段でもある。このような権利が、何か別の契約から発生することがある。例えば、1枚の小切手が売買契約で発生した債務の支払いのために発行され、権利が流通性書類の形式で表現されると、この権利は元の契約から分離されたものとなる。このように、小切手の振出人は、小切手の有効性について争う場合に、原因契約の履行に関わる瑕疵を取りあげることはできない。この例外として、英国法における「約因の基本的滅失」(fundamental failure of consideration)が挙げられる。
?識別確認と呈示の機能
流通性書類は、その書類債務者に対して通知することなく譲渡できる。これは、調査対象となった各法体系の基本原則の例外に当たる。基本原則では、第三者への権利譲渡は、債務者が債務弁済前にその通知を受けている場合にのみ、有効である。
この原則の結果として、流通性書類の所持人は支払いを確保できるのであり、また同様に、債務者は書類それ自体を呈示する者に対する弁済によって債務を有効に消滅できることを知るのである。しかし、債務者は呈示者が正当な所持人であるか否かを確認しなければならない。「持参人式」書類の場合、特に確認は要求されない。しかし、ほとんどの流通性書類は「指図式」であり、裏書がなければ譲渡できない。このような場合、債務者は呈示者へ繋がる有効な裏書の連鎖があることを確認しなければならない。
登録によって譲渡可能な証券もある。例えば、フランスとベルギーの法律では、記名株券は会社が管理する株主名簿に登録されたとき、はじめてその譲渡が有効となる。

 

 

 

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